○国民病といわれている認知症
日本の社会は第二次世界大戦後の経済復興、総中流社会の登場、健康対策の充実等もあって
平均寿命が男女とも90歳前後になり高齢化社会を迎えております。
今まで三大疾病というと①がん②心疾患③脳疾患でしたが、今後はアルツハイマー病に代表
される「認知症」をいかに克服していくかが課題となります。
最近の統計でも認知症患者は推定7~800万人、潜在患者も同数いるともいわれております。
治療法も確立しておらず、一度発症すると投薬で症状を遅らせることしか出来ないのが実情です。
○実際にあった話
ある認知症患者が家族の留守中に浅草駅から東武伊勢崎線に乗り館林駅まで来てしまい、
駅前交番で保護されました。身元の分かるものがなく、衣服に名前があったのですがたまたま
名前と名字を反対に登録したようでその後の警察の捜索人検索でもヒットせず、結局館林の
高齢者施設に保護され5年近く過ごしたそうです。偶然NHKの施設生活紹介の番組でレクリエー
ションをしている様子を家族が見ていて本人確認ができ、浅草に戻れたそうです。
○認知症による行方不明者
このように認知症による徘徊から行方不明になる方は、警察庁の発表で昨年も全国で1万7千人
ほどいたようです。その数は増加傾向にあります。自分の名前や住所も分からないまま歩き出し、
周りの方の気づきや不審な動きで保護されることも多いようですが、中には事故にあいケガや
亡くなってしまうことも…。
最近では地方自治体でも様々な対策を講じています。例えば福岡県大牟田市では家庭や施設から
認知症の方がいなくなると警察に届け、市内の協力員にメール等で本人の特徴を発信し、近隣で
発見した場合に連絡する体制があるそうです。
○認知症患者への支援策
認知症はかつて「痴呆症」とも呼ばれ人格が無視されたような様々な状況の中で今日に至ってい
ます。医学的立場では精神保健対策の1つとして様々な対策が講じられてきましたが、介護保険制度
の中でも認知症専門施設の創設等も支援策として確立されてきました。
家庭内の実際の動きとして「財布がなくなった」「俺を馬鹿にしているのか」等介護地獄、家庭崩
壊の様子が世の中に知られるようになり、国や地方自治体もその対策に力を入れざるを得ない様々
な取り組みが実施されてきました。
2023年6月には認知症の方が希望をもって暮らせるように国や地方自治体の取り組みを定めた
「認知症基本法(共生社会の実現を推進するための認知症基本法)」が成立しました。
○今後の課題と私たちはどうしたら良いか?
法律や制度が出来ても、実際にそれがどう運用されるか、その内容を理解し活用できるかが
大きな課題です。まず気になりましたら、各市町村の保健福祉担当課や介護施設等の専門部署に
相談してみたり、地域の民生委員に実情を話し家族支援をお願いすることも大事です。
病気の一番の解決策は「早期発見・早期治療」といわれております。重症化するまでほうっておか
ずに素早い対応が必要です。
○参考・認知症予防の10か条(公益財団法人 認知症予防財団)
1 塩分と動物性脂肪を控えたバランスの良い食事を
2 適度に運動を行い足腰を丈夫に
3 深酒とたばこをやめて規則正しい生活を
4 生活習慣病(高血圧・肥満等)の予防・早期発見・治療を
5 転倒に気を付けよう 頭の打撲は認知症を招く
6 興味と好奇心をもつように
7 考えをまとめて表現する習慣を
8 こまやかな気配りをしたよい付き合いを
9 いつも若々しくおしゃれ心を忘れずに
10 くよくよしないで明るい気分で生活を
皆さんにとっていくつ当てはまりますか?
本日から実現できることから実行し、認知予防に努めましょう!
また、若い皆さんにも自分のご両親や関係者でこのような課題がないか?
是非関心を持っていただくとありがたいです。
(文責・上毛共済顧問 小出省司・元群馬県病院管理者)